できること 考え 
アーティスト 堂本 剛


高校野球の球児へ 

夏のドラマの主役、球児のみなさん。
僕は自身のプロジェクトを始めてから「ソメイヨシノ」という歌を作りました。僕と母は毎年、桜を見に出かけます。ある年、母が「あと何回、いっしょに桜が見れるのかなぁ」と背中でぽつりと言いました。そのとき、母の背中越しに、桜の花びらが舞い落ちるのが遠くで見えました。その情景が心に残り、詩を書いたのです。完成した曲を聞いた母が「ありがとう」と言ってくれました。60を過ぎた母に、20代の僕がパワーをあげられた。そんなできごとだったと思っています。いまでも母の携帯電話の着信は「ソメイヨシノ」なんですよ。 

大会に出るあなたたちの姿を、親御さんたちはきっと見るでしょう。相手に立ち向かう姿、ひとつひとつのプレーにわくわくする。「育ててきてよかった」なんて思うこともあるでしょう。自分が生き生きしてくるのを感じるんじゃないでしょうか。試合に勝とうが負けようが、見る人は、あなたたちから様々なメッセージを受け取るはずです。 

僕は自分の作品にメッセージを込めて、たくさんの人に聴いてもらい、見てもらっています。だが、ときには、どうしたらいいのか、わからなくなることがあります。とっても悩みます。そんなとき僕は奈良に戻って、平城宮跡の芝生に寝転びます。広い空に包まれながら、一度きりの人生だ、自分はどうしていけばいいのか今の僕には何が必要なのか。ゆっくりと考えます。すると歴史深いところからエネルギーをもらえる気がします。 

僕を救ってくれたものの中に音楽があります。70年代のロックやファンクを聞いて「ええなぁ」と思い、まねもします。でも、指が短くてギターの弦が届かないとか、声が出ないとかまったく同じにはなれない。じゃあ、僕ができることは何んだろう。自分のスタイルは何だろう、と考えます。現代や過去、日本人や外国人、数えきれないぐらい多くの人から影響を受けましたが、自分なりに考え、試していく中からオリジナリティーが生まれてくるんだと思います。 

野球でも、悩み苦しむ場面がたくさんあるでしょう。自分ができることは何だろう、想像しながら、自分らしく素直に生きようとすることが大切だと思います。野球に詳しくない僕ですが、イチロー選手は純粋にかっこいい。高いレベルで挑戦し続ける姿に刺激を受けます。大会では、自分たちなりの闘いをして欲しいなと思います。闘いを通じて、これまで生きてきた、という意味を証明するのです。そして、いい汗といい涙を流すことができたらいいんじゃないかなと願っています。
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